パクチーの王様
「やばい気がします。
 お兄ちゃん呼んでもいいですか?

 あの人、昔、レストランでバイトしてたんで」
と言うと、

「じゃあ、呼べ」
と言う。

 さすが判断の速い逸人は、客の列を見て即決した。

 すぐに兄、聖ひじりはやって来てくれた。

「おいおい。
 窓を高圧洗浄機で洗ってる途中だったんだが」
と言いながら。

「正月明けにお前らやれよ」
と言う兄がなにやら楽しそうなのは、久しぶりにウェイターをやるからか、掃除を途中で抜けられたからかは、わからない。

 快く送り出してくれた水澄《みすみ》さんに、なにかお礼をせねばな、と思っている間に、十時になり、店が開店した。
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