パクチーの王様
今、逸人にお賽銭をあげたくなったことを思い出しながら、
「そういえば、今年は、初詣には、行けませんねー」
となんの気なしに言うと、逸人は、
「行けばいいじゃないか。
まだ時間はあるぞ。
……実家にも寄れなくもないし」
と言ってきた。
「ああ、逸人さんちですか?」
やはり、あれから挨拶に行ってないことが気になっていたのだろうか、と思い問うてみたが、
「そうじゃない」
と言う。
「うちになんか行かなくていい。
お前の実家だ」
「えっ?
うちですか?
いや、いいですよ。
この間行ったばかりですし」
そこで会話は止まってしまった。
なんなのかなー。
なにかが噛み合っていないような、と小首を傾げながら、芽以は黒豆を食べた。