パクチーの王様




 俺は目標に向かって、コツコツ物を積み重ねていくのが好きだ。

 そうしているうちに、嫌いなものも、苦手なものもなくなったりするから。

 だから、いつでも、段取り良く、きちんとやって行きたいのだが――。

 おせちを用意したのはまずかっただろうか。

 そんなことを考えながら、逸人は黒豆を食べていた。

 芽以が忙しそうだったから、準備などできないだろうと思って、買ってきてしまったのだが。

 かえって恐縮してしまったようだ。

 ……のわりには、パクパクよく食べてるが、と思いながら、芽以を眺める。

 自分が早く食べろと言ったので、急いでいると芽以は思っているようだ。

 いや、急いではいる。

 だが、その理由を芽以には言い出せないでいた。

 さっきも言えなかったな、と思いながら、逸人は熱いお茶を飲む。
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