パクチーの王様

 なんて美味しそうなっ。

 だが、シッポウフグが海底に作り出す美しいミステリーサークルのように並べられたそれに、逸人は、鮮やかな緑色のものをふりかけ始めた。

「何故、パクチーをかけるんですかっ」

 思わず叫んで、
「……此処がパクチー専門店だからだ」
と冷静に言われてしまう。

 そーでしたね……。

「すみません。
 あまりに美味しそうで美しい牡蠣の姿に、正気を失ってしまいました」

「お前はいつも正気を失っているだろう」

 ほら、持ってけ、と言い、逸人はすぐに違う料理にとりかかる。

 無表情にパクチーの味見をしている逸人を見ながら、この人、本当に偉いな、と芽以は思っていた。

 嫌いなパクチー食べても表情も変わらないもんな。

 まあ、笑いもしないが。

 ……私と居て、無表情なのも同じ現象かな、と思いながら、芽以はそのぷるぷるの生牡蠣を運んだ。
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