パクチーの王様



 悪くないおみくじだった、と逸人はチラと棚の上に祀っている親亀子亀孫亀を見ながら思う。

 芽以のおみくじには、
「縁談 思い変えて吉」
とあった。

 圭太は諦めろということだろう。

 神のお告げだぞ、芽以、と思う。

 初詣に行ってよかった。

 圭太のように口に出さずとも、着物を着た芽以と手をつなげたしな。

 ……一瞬だったが。

 今年はいい年になりそうだ。

 思い切って、パクチー専門店を開いてよかった、と思いながら、完璧に味付けした海鮮料理の煮えたぎるフライパンに、パクチーを投入する。

 もうもうと上がる湯気に、思わず、息を止めていた。

 ……軽く吐きそうなんだが。

 客の手前、芽以の手前、顔には出せない。
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