パクチーの王様




 店に帰った芽以は、お風呂に湯が溜まるまでの間、逸人に、パクチーの講義を受けていた。

 お店に来たお客様に、いろいろ問われることがあるからだ。

 厨房で実物を見せながら、逸人は言ってくる。

「パクチーは丸ごと使えて、捨てるところはないと言われている」

 パクチーは丸ごと捨ててください。

 芽以はメモを取りながら、思っていた。

「根も香りが強く、甘みがあって、いろんな料理に使えるな。
 根つきのパクチーを買って、根と茎を少し残しておくと、栽培できて、もう一回食べられる」

 いえ、丸ごと捨ててください、と思いながら、メモを取る。

「茎には切り込みを入れると、香りが強くなっていい」

 じゃあ、入れないでください。
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