パクチーの王様
うん。
点検しろとは言ったんだがな。
ホールの中央に居る芽以は、襲いかかる敵に備えているのかと問いたくなるような前傾姿勢で、周囲を見回していた。
おそらく、ミスのないように、と思う緊張感が芽以にそうさせているのだろうが。
忍者か、と逸人は思う。
一ヶ所ずつテーブルを見て歩き始めた芽以を眺めがら、自分も厨房の点検をする。
今のところ、店は順調に回っている。
――早く店を開きたかった。
すべてにケリをつけるために。
会社に未練がないわけでもなかったから、余計に、と思いながら、芽以を見た。
「……芽以。
テーブルの下は確認しなくていいぞ」
爆弾がないかと探ってでもいるかのように、芽以はテーブルの下に潜っていた。