パクチーの王様
今日もいい天気だなあ。
芽以は料理を運んだあと、チラと外を見た。
凧でも浮かんでいたら似合いそうな、気持ちのいい正月の空だ。
あと少しでお昼はオーダーストップかな、と思ったとき、その声はした。
「あらー、流行ってるじゃないのー」
大きな声だったからか、その女が派手だったからか、まだ食べていた客たちが、ぎょっと入り口を振り向く。
そこには、艶やかな美女が立っていた。
店内の老若男女が、同時に、チラと厨房に居る逸人の方を見る。
その女と逸人がそっくりだったからだ。
……どうなってんのかな、此処んちの遺伝子は。
全部同じ顔が出るとか、と思っている芽以の側に来た彼女は、ぽんぽん、と女にしては大きな手で芽以の腕を叩いてくる。