パクチーの王様

 自分の覚悟が揺らぎそうだから。

 圭太を好きなままの芽以と結婚する覚悟――。

「会社は圭太にくれてやったから、芽以はもらってもいいと思ったの?」

「なんで俺が責められてんだよ。
 圭太は芽以より会社を選んだんだ。

 だから、俺もそこまでの覚悟があるのなら、と圭太の邪魔にならないよう、会社を辞めたんだ」

「それで嫌いなパクチーの専門店開いちゃうのがあんたよね?」

 そういうとこは、とことん自分に厳しいのかしら、と砂羽は笑う。

「いや……」

 それはちょっと違う、と思っていた。

 自分がパクチーの店を開いたのには訳がある。

 そして、それを続ける決心が出来たのにも訳がある――。
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