パクチーの王様
「ともかく、圭太は芽以を捨てて、会社を選んだんだ。
 俺なら、会社を捨てて、芽以を取る」

 思わず、そう言ってしまい、一瞬、あっけに取られたような顔をした砂羽だったが、すぐに笑い出した。

「あれだけ、必死に仕事してたのにね……。
 あんたの方が、実は情熱的ね、逸人」

 でも、後悔はない? と砂羽は訊いてくる。

「その顔が障害になるかもよ。
 圭太とそっくりな、その顔を見るたび、芽以は圭太を思い出す」

 そう言って、そっと頬に触れてきた。

 子どもの頃のように。

 そのとき、芽以がおっかなびっくりお茶を運んできた。

 どうやら、淹れすぎたようだ。

 こぼさないよう、抜足し差し足やってくる。

 ……大丈夫か、この店員。

 客が居ないと、すぐに気を抜くようだ。
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