パクチーの王様

 いやー、あれは来ないと思うけどなー、と砂羽は思う。

 逸人が連れてくる気がないからだ。

 芽以は、あの性格だから、まだ両親に挨拶していないことを気にしているのだろうが。

 だが、圭太は、ひとり、ブツブツと言っている。

「来るはずなのにな、芽以。
 なんで来ないんだろうな」

 ……弟よ。
 目がうつろだが、大丈夫か?

 いつの間にか、自分よりずいぶん大きくなっている弟を見上げ、砂羽は、

「ねえ」
と声をかけた。

 このまま訊くまいかと思っていたことを訊いてみる。

「あんた、なんで、芽以に逸人と結婚しろって言ったの?」
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