パクチーの王様
さすがだ。
近所に適当に開いてる店があるからといって、これか、と思う。
芽以たちは、店から歩いていける場所にあるホテルの最上階のダイニングバーに居た。
ま、お正月でも開いてるよねー、ホテルだから。
こういうところは、旅行に行ったときくらいしか行かないんだが、と思いながら、少々緊張しつつ、メニューを見る。
薄暗い店内でなにを頼もうか迷っていると、逸人が適当に頼んでくれた。
酒もいつも同じものを頼みがちなので、たまには人に頼んでもらうのもいい。
新しい発見もあるし。
……新しいハズレも味わうし。
二杯目のカクテルが香りが強すぎて、いまいち口に合わなかったので、進まなかったのだが、逸人が、
「なんだ。
呑まないのなら、貸せ」
と言って、芽以のカクテルを取ると、呑んでくれた。
うひゃーっ。
申し訳ございませんーっ。
せっかく選んでいただいたのにーっ。