パクチーの王様



 少し酔いの覚めた芽以は、お風呂に入ったあと、逸人と一緒に戸締まりをした。

「今日はありがとうございました。
 おやすみなさい」
と廊下で頭を下げた芽以は、さて、と寝ようとした。

 が、
「待て」
と言われる。

 相変わらず、犬に命令するか、生徒に号令をかけるかのような口調だ、と思いながらも振り向いたが、逸人は、何故か、そのまま黙り込む。

 な、なんでございましょう、と芽以は緊張する。

 今日、間違えて、違うテーブルに料理を運びかけて、引き返したのが見えてたとか?
と怯えていると、逸人は、

「……一緒に寝てみるか?」
と言い出した。

 言っている自分自身が戸惑うような感じで。

 貴方、今、誰に言わされているのですか……という感じだった。
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