パクチーの王様
いや、この人もまたお坊ちゃん育ちのはずなんだが、なにかいつも、辛辣だからな、と思っていると、
「それで、俺は、此処にパクチー専門店を出すことにした」
と逸人は言い出す。
「結婚したら、もちろん、お前にも此処で働いてもらうぞ」
すみません。
イブの夜に、圭太に告白されて、フラれて。
逸人さんと結婚して、パクチー専門店で働かされる、までの流れがちょっと理解できないんですが、と思いながら、芽以は言った。
「すみません。
もう一回、言ってください」
「パクチー専門店を開くことにした。
俺と結婚して、お前にも此処で働いてもらう」
なんか、結婚じゃなくて、『働いてもらう』が主眼のように聞こえるのは気のせいですか? と思いながら、芽以はもう一度、言ってみた。
聞き違いだと思いたかったからだ。