パクチーの王様
「まあ、運んでこなくていい」
と言われ、

 では、いずれ、出て行けとっ!?
と思っていると、

「店が軌道に乗ったら、もっと山の方に入ろうかと思ってるから」
と言ってくる。

「あのー、なんで、山の方に……」

 まあ、今は遠くても美味しいなら、お客さん来てくれますけどね、と思いながらも問うと、

「そこまでパクチーを食べに来るのなら、本物のパクチー好きと言うことだからだ」
と言う。

 いや、貴方、パクチー嫌いなんですよね……?

 何故、お客様のパクチー好きを試すような真似を、と思いながら聞いていた。

 部屋の入り口に立つ逸人は、自分のシングルのベッドを見、
「……狭いな」
と言い出す。

 そーですね、と思っていると、
「ちょっとお前の部屋に入ってもいいか」
と言ってきた。

「ど、どうぞ」
と言うと、逸人は芽以の部屋に行って、布団を抱えてきた。
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