パクチーの王様

 そして、自分のベッドの布団を下ろし、横に並べる。

「じゃ、おやすみ」
と唐突に言われ、は、はいっ、と慌てて、芽以は、おのれの布団に入った。

 部屋はもう充分温まっていて、すぐにも眠れそうだった。

「お、おやすみなさい」
と言うと、逸人は、うん、と言って、電気を切った。

 だが、月明かりと街の明かりで、そんなに暗くはない。

 わー、ちょっと緊張するなーと思う。

 自分の家で、自分の布団なのに、なんだか全然別の場所に居るように落ち着かない。

「芽以?」
と呼びかけられ、

「なんだか、交差点の真ん中に布団を敷いて寝ている気分です」
と言ってしまい、

「……それは落ち着かないな」
と言われてしまった。

 そのまま、沈黙する。
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