パクチーの王様

 は、はい、と布団の中から手を出すと、逸人はこちらを見ないまま、手探りで手を握ってきた。

 ひーっ。
 やめてくださいーっ。

 緊張して、眠れなくなるではないですかっ、と芽以は逸人の方を見たまま固まる。

 逸人がこちらを向いた。

 じっと自分を見つめてくる。

 も、もう無理ですっ。
 緊張で失神しますっ、と思ったとき、逸人が目を閉じた。

「おやすみ、芽以」

 いや、寝られませんっ!




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