パクチーの王様



「おやすみ、芽以」
と言って、逸人は目を閉じた。

 今日は俺にしては上出来だな、と思いながら。

 手を握るくらいなら、芽以も文句は言うまい。

 昔、我慢してパクチーを食べたら、次の日、芽以が遊びに来たとき、圭太が歯医者に行っていて、居なかった。

 芽以が、
「今日は圭太、居ないから、二人で遊ぼうね」
と言って、にこっと俺に笑いかけてきた。

 緊張して、上手く遊べず、芽以はつまらなさそうだったのが、残念だったが、貴重な二人だけの思い出だ。

 あのみんなでカウントダウンに行ったときも、最初は芽以は自分の側に居た。

 寒い寒いとみんなは言って、ウロウロしていたが。

 自分はあまり寒さがこたえない体質なのか、気にならないのか、そう寒くは感じなかったので、花火が上がるのを待ちながら、ベンチに座ってじっとしていた。
 
 そのとき、
「寒いですねー」
と言って、芽以が側に来た。

 ひょい、と横に座る。
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