パクチーの王様
「わー、どれも美味しそうー」

「私、追《つ》いパクしちゃおー」
と逸人が厨房に戻ったあと、席に着いたみんなは楽しげにメニューを眺め始めた。

「いい店ね、芽以」
とこちらを振り向き、千佳が言ってくる。

 いつも一緒に居る友だちからのその言葉がなんだか心に染みた。

 いや、私はこの店の最初の段階から関わってたわけでもないんだが、と思いながらも、
「……ありがとう、千佳」
と、じんとしながら、芽以は言う。

 圭太にフラれてから怒涛の展開で此処まで来たことなど改めて思い出している芽以に、千佳は笑顔で言ってきた。

「じゃあ、私は、このランチBね。
 パクチー抜きで!」

 千佳……、お前もか。
 







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