パクチーの王様

 いや……、本当に今、どうでもいい話なんだが、と思いながら、芽以は、
「窓際の席が空いてるからどうぞ」
と圭太を席に案内する。

 少し雪が降ったのか、窓枠にうっすら雪が残っていた。

 水を運んでくると、メニューを見ていた圭太は、
「……パクチー」
と呟いたあとで、少し悩み、

「夕食は食べてきたんだが。
 食べてみようか、パクチー」
と言う。

 ……まあ、此処、パクチー専門店ですからね。

「この店に入っただけで、少し目眩がしてるんだが、頼んでみよう。
 じゃあ、出来るだけ、パクチーの入ってないやつ」
とメニューを閉じ、圭太は言ってきた。

 相変わらずだな、と苦笑いしながら、芽以が、逸人のところに行き、
「なんでもいいから、パクチーの少ないのだそうです。
 夕食は食べてきたみたいだから、軽いものの方がいいかもしれないです」
と言うと、逸人は表情も変えずに、

「叩き出せ」
と言う。
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