パクチーの王様

 周りのお客さんたちも、手に汗握って、その様子を眺めていた。

 誰しもが、最初からパクチー好きというわけではない。

 ある日、いきなり目覚めたという人も多いはずだ。

 臨界点を超えて、花畑が見えて、そうなるのかもしれないが……。

 みな、パクチー嫌いだったときのことを思い出しているのか。

 圭太が食べ続けるのを息をつめて、見つめている。

 圭太は水を飲み干し、逸人を向くと、
「食べてんだから、客だろう。
 追い出すなよ」
と言った。

 近くの席に居た人たちが、
 その人、頑張ってるんだから、居させてあげて、シェフッ、
という目で逸人を見ている。

 逸人は溜息をつき、
「……食べてる間だけだぞ」
と言って、厨房に戻っていった。
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