パクチーの王様
今日は芽以の部屋で、二人で布団を並べて寝ることになった。
「お前のベッド、此処に運ばないのか?」
と天井を見たまま、逸人が訊いてくる。
「運ばなくてもいいかなと思ってます」
と言うと、逸人はこちらを向いた。
「だって、そのうち、引っ越すんでしょ?
だったら、あまり此処に物運ばない方がいいですよ」
そう言うと、逸人は少し、ホッとした顔をした。
「もしかして、それでこっちにあまり荷物を置いてないのか」
と訊いてくる。
急だったので、芽以のアパートはまだ引き払ってはいない。
荷物もそのままだ。
今月中には移動させる予定だが、一時的に実家に置かせてもらおうかと思っていた。
逸人が予想外に早く秘境に移るかもしれないと思ってのことだ。