パクチーの王様

 逃げ出すことさえ出来ずに、すぐ目の前に来た逸人の顔を見つめる。

 ど、

 どうしたら……

 どうしたら……

 どうしたらっ!?

 なんかこの人、こんな間近に見ても、こんな綺麗だしっ。

 私なんて、化粧してなくて、寝起きだったりすると、すごく腫れぼったい顔してるしっ。

 一緒に寝るとかっ。

 それもこんな間近で寝るとか、ほんと無理ですっ、と思っている間に、逸人は芽以の背に手を回し、抱き寄せてくる。

「大丈夫だ、芽以。
 そのうち、きっと、お前にも、なにかいいことがあるさ」

 逸人のいつも厳しいが、不思議に心地いい声が耳許で、そう告げてくる。

「……なに言ってんですか。
 私は今も、楽しいですよ。

 逸人さんのおかげです。
 ありがとうございます」
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