パクチーの王様
「ブームとはいえ、苦手な人、まだまだ多いですよね。
 でも、丹精込めて育てたので、美味しく食べていただきたいです。

 ……私は食べられませんが」
と人の良さそうな笑顔で言ってくる。

「私もですっ」
と芽以はパクチーを手に、商品の説明をしていた神田川の日焼けした分厚い手をつかんだ。

「私もパクチー苦手なんですけど。
 逸人さんが作ったお料理、みなさんに、美味しく食べていただきたいですっ」
と言うと、

「逸人さん、いい奥さん、もらわれましたね」
と神田川は微笑む。

 あれっ? と思った。

「……ご存知なんですか?」

 私たちが結婚してること、と窺うように見ながら問う。

 別に隠しているわけではないが、そうおおっぴらに言ってもいないからだ。

 現に、さっきのご友人たちも知らなかった。
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