パクチーの王様
「私、逸人さんのお友だちに初めて会いました」
そんな芽以の言葉を思い出しながら、賄いを片付けたあと、逸人は二階に上がっていた。
そりゃそうだろうな。
会わせなかったんだから、と逸人は思う。
開店祝いに来たいと言った奴らには、芽以の居ない日に来いと言っておいたくらいだ。
みんな、気のいい連中ばかりだ。
きっと芽以も好きになってしまうに違いない。
そして、あいつらもチャラチャラしてはいるが、特定の彼女は作っていないので、芽以を好きになってしまうかもしれない。
俺も圭太もずっと芽以を好きだったくらいだからな、と砂羽が居たら、後ろからはたいて来そうなことを思っていた。
下に下りると、裏口の外から、芽以の話し声が聞こえてきた。
なんだかわからないが、男と盛り上がっているようだ、と思ったら、神田川とパクチー談義をしているようだった。