パクチーの王様
「でも、逸人さん、よかったですね」
と言われ、神田川を見ると、

「芽以さんと結婚できて」
とにんまり笑って言ってきた。

 ……なにを言うか、と思いながらも、少し赤くなってしまう。

「ご両親はご存知なかったようですが。
 ……我々や使用人はみんな知ってますよ、逸人さんがずっと芽以さんを……」

「神田川さん。
 そろそろ戻った方がいいんじゃないですか?」

 何処で芽以が聞いているかわからない。

 早口に話を遮ると、ああ、そうですねえ、と笑いながら、神田川は、
「では、今後ともよろしく」
と言って去っていった。

 中に戻ると、芽以は、せっせと夕方からの営業の準備をしていた。

 よく働くな、と思いながら、ホールに居る芽以の横顔を眺める。

 そして、なんだかわからないが、いつも楽しそうだ。

 神田川と嫌いなパクチーの話してても、楽しそうだったしな、と思って、ちょっと笑ってしまう。
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