パクチーの王様

 ポリバケツの横に捨てられた猫のようにしゃがんでいる。

 一瞬、驚いたが、いつものように顔には出さなかった。

「なにをしている。こんなところで」

 びしょ濡れじゃないか、と頭から肩にかけて濡れている圭太を見た。

「いや、日向子に酒をかけられて」
とポリバケツの横で膝を抱えていた圭太が言う。

「なんでだ」
「……俺が日向子を見てなかったからだろうな」

 強引に結婚に持ってっといて、強気だな、日向子……。

 逸人は溜息をつき、
「まあ、いい、入れ。
 いや、ちょっと待て」
と言ったあとで、裏口から中に向かい、叫んだ。

「芽以ー。
 ちょっと上に上がっとけ。

 下りてくるなよー」

 圭太が、なんだそれは、という顔をしていた。




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