パクチーの王様
そして、
「芽以にまで、日向子が妊娠してると言ったのはなんでだ」
と圭太に訊いていた。
「そう言わなきゃ、芽以が俺を諦められないかと思ったからだ」
気を落ち着けようと口許に運んだシャンパンを軽く吹いてしまった。
「俺はずっと芽以を好きだったんだぞ。
芽以もずっとそんな俺の側に居てくれた。
だから、俺が芽以を好きなくらい、芽以も俺を好きでいてくれたはずだ」
「待て」
と逸人がその語りを止める。
「どんな誇大妄想だ。
ていうか、その理屈が通るなら――」
と言いかけ、逸人は、何故か、その続きを言うのをやめた。
その理屈が通るのなら――
なんなんだろうな、と思ったが、逸人はその先を言うことはなかった。