パクチーの王様

 どうしたっ、芽以っ。

 実は俺のことが好きだとかっ?
と思っていると、自分の両腕をつかんできた芽以が、
「すみません。
 逸人さん。

 明日、なんでも貴方の言うこと聞きますから、今日は、このまま居させてください~」
と言って、胸に小さな額をこすりつけてきた。

 なんでも俺の言うことを聞くって……。

 ……明日じゃなくて、今がいいんだが、と思ったあとで、

 まあ、こいつのことだ。

 言うことを聞くって、きっと、仕事のこととかなんだろうな、と思い直す。

 口に出して訊いたら、平然と、
「それ以外のなにが……?」
とか小首をかしげて言いそうだ、と思いながら、そっと芽以の背に手をやった。

「じゃあ――

 今日だけだぞ」
と囁いて。





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