パクチーの王様
この間、祝いに来てくれたメンバーのひとりだ。
「静《しずか》」
産まれてすぐ、ぎゃあぎゃあ泣き続けて父親が、
「うるさいっ、静《しず》まれっ」
と叫んで、『静』になったという、嘘かほんとかわからない逸話のある男だ。
「この間、一個渡すの忘れてた」
と小箱を渡してくる。
「羽ペン。
電話で注文受けたとき、こういうので、サラサラッと書いてたら、お洒落じゃん。
あの上品で美人なお前の彼女とか」
と言ってくる。
「……芽以のことか」
確かに、注文を受けた芽以が伏し目がちにメモを見ながら、サラサラッと書く姿は美しいだろうが。
それは、その手許で書かれた字を見なければの話だ。
何語ですか、とか常連さんに微笑まれて言われそうだ、と思っていると、静は、
「じゃ」
とあっさり帰ろうとする。