パクチーの王様
「待て。
 お茶でも飲んでいけ」
と逸人が言うと、

「いや、いいよ。
 開店前で忙しいだろ。

 っていうか、今の甘々な会話聞いてたら莫迦莫迦しくなったから、その辺でナンパしてくる」
と手を挙げ、あっさり静は出て行った。

 かなりマイペースだと思う自分でも、どうかと思うくらいマイペースな男だ。

「ありがとう」
と言ってみたが、

「いやいや」
というセリフはもう、裏口の戸の向こうから聞こえていた。





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