パクチーの王様
ありゃ全然進展なさそうだなー、と思いながら、静は店の外に出た。
まあ、逸人だからな、と思う。
あれだけ頭が切れてイケメンでも、まったくそういうことには疎うとい奴だから。
だが、おままごとのようなカップルが新鮮で可愛らしく。
まあ、あそこは、あのままで居て欲しいような気もする、と思ったとき、何故か、肩にかけたフェンディのピンクのファーを持ち上げ、顔を隠すようにして、店内を覗いている女が居る。
「この店になにか用?」
たいして考えもなしに声をかけると、女はビクリと振り向く。
ショートカットで目許のきつい美女だ。
いい女だな、と思う。
同じ上品そうな美人でも、芽以とは対照的だ。
芽以は、ふんわりして可愛い感じだからだ。