パクチーの王様
店の開店時間になったので、すぐに普通のお客さんたちも入ってきた。
すぐに彼らと話す時間は取れそうになかったので、逸人は、奢るからなにか食べててくれ、と言って、厨房に戻っていった。
芽以は、静《しずか》と日向子《ひなこ》を店内に通す。
二人はなんとなく同じテーブルに座り、なんとなく料理を頼み、なんとなく食べていた。
別にパクチーを食べに来たというわけでもないのに、普通に、さっと食べられるのって、すごいなーと感心しながら、芽以は料理を運ぶ。
二人は無言で座っていたのだが、パクチーピザが目の前に出された瞬間、日向子が動きを止めた気がした。
だが、静が平然と、パクチーの中華風サラダを食べ始めると、日向子もピザを食べ始めた。
何故か、静の目を見つめたまま、無言で口を動かしているので。
……日向子さん、もしや、パクチーお嫌いでは?
と思う。
なんだかわからないが、静に負けたくないようだ。