パクチーの王様
逸人は遠慮もなく、詰問口調で日向子に訊いている。
「お前、芽以のことを偵察に来たんだろう。
誰だ、芽以が此処に居るとバラしたのは。
砂羽か?」
「あら、お義母様よ。
芽以さんにご挨拶したいって言ったら、それは良いことねって、すぐに教えてくださったわ」
「相変わらず、どうしようもない親だな」
と逸人は呟いていたが、何処か諦めている風でもあった。
まあ、親のことに関しては、子どももある程度の年になると、はいはい、と流せるようになる。
親からしてもそうなのだろうから、お互い様かもな、とは思っていた。
そのとき、静がいきなり、
「ねえ、逸人。
さっきの羽ペン、開けてみた?」
と言い出した。
「いや、まだだが……」
「じゃあ、行こうよ」
と言って、逸人を連れて厨房に行く。
なんだかわからないけど、二人だけにしてくれたようだ。