パクチーの王様
「女王様が元気になって帰っていったが、いいのか」
そう逸人が言うと、芽以は、
「いけませんか?」
とほんとうに不思議そうな顔で、こちらを見、訊き返してくる。
こいつの気持ちがわからない、と逸人は思っていた。
お前、圭太が好きだったんじゃないのか?
日向子に同情して、もう圭太はどうでもよくなったのか?
では、形ばかりの夫である俺など、もっと簡単に捨てられるのだろうか。
チラと横に居る静を見る。
静なんか、いい男だし、いいヤツだし。
俺が女だったら、絶対、惚れると思う。
こいつを芽以のそばに置いておくと、芽以はこいつを好きになってしまうに違いない。
「静」
と呼びかけると、静が、なんだ? とこちらを向く。