パクチーの王様

 一度、手を止め、顔をしかめたあとで、圭太と同じように、結局、全部かけた。

 おおっ。
 それ、結構来ますよ、と思いながら、それらを口許に運ぶ彼の写真を何枚か撮った。

 すると、
「うっ」
と叫び、彼は目でなにかを探した。

 芽以にはわかる。

 トイレだ。

 自分もそうだったからだ。

「こちらですっ」
と芽以は慌ててトイレに彼を案内した。

 彼は、しばらくして、トイレから出てきた。

「すみません。
 僕、パクチー苦手で」

 ……挙動不審だったので、わかってましたよ、と微笑みながらも思っていたが、言わなかった。
< 313 / 555 >

この作品をシェア

pagetop