パクチーの王様

 美味しい。

 どうなってんだ、この出汁。

 めちゃくちゃ澄んでるが。

 などと思いながら、結局、料理もお酒も美味しくいただいた。

 まあ、多少、堅苦しい人たちではあるが、逸人の両親は、子どもの頃から知っている。

 気づけば、結構和やかに時は経っていた。

 酒が入ったせいもあり、富美が語り出す。

「あー、今日は楽しいお酒だわ。
 でも、今度の食事会はこうはいかないわね」

 だからあのー、甘城とも親戚になるわけですし、そう構えなくてもいいのでは、と思いながらも、余計な口は挟まない方がいいだろうと思い、芽以は黙っていた。

「芽以さんは、しっかり育てられた、いいお嬢さんだから、安心よ。
 逸人を頼むわね」

 ご先祖様は殿様とかいう富美にそう言われ、はっ、おおせのままに、と言いそうになるが。

 逸人さんが、頼まれたいかはわからないけどな、と思っていた。
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