パクチーの王様
なんか今日はいろいろ考えちゃったなーと思いながら、芽以は厨房に立つ逸人を眺めていた。
帰ってすぐ、逸人は風呂にも入らず、厨房に入り、そのまま、なにもないまな板の上を眺めている。
さっき食べた料理を頭に思い浮かべ、パクチーを入れた状態でのアレンジをいろいろと試みているのだろう。
好きだな、と思ってしまう。
こんなときの逸人さんの表情が――。
芽以は、逸人の邪魔をしないよう、こちらを見てはいない彼に向かい、ペコリと頭を下げた。
おやすみなさい、と心の中で呟いて。