パクチーの王様
「あら、美味しいじゃない」
と一口飲んで日向子が言ったとき、向こうを片付けてきてくれたらしい逸人がやって来て、日向子に文句をつける。

「日向子、朝っぱらからなんだ、帰れ。
 お前、自称妊婦なんだろうが、寒いのにウロウロするな」

「自称妊婦っていうか。
 思い詰めてたら、寝不足になって、生理が止まっちゃって。

 その話がうちの親から、圭太の方によくわからない形で伝わっただけよ。

 ……これ幸いと話を押し進めちゃったのは、ほんとだけどね」

 日向子は、そう言いながら、棚の上の小さな観葉植物を見つめている。

 話が話だけに、他に愚痴りにいけないんだろうなーとちょっと同情してしまった。

「あー、此処はなんだか平和ねー」
と日向子は言い出すが。

 いや、全然平和じゃないです、と芽以は思っていた。

 夫婦なのに、常に妙な緊張感が漂ってますしね……。
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