パクチーの王様

 そういうものなのだろうか。
 よくわからないが……、と思ったとき、日向子は笑って、ああ、という顔をした。

「私、圭太から名前しか聞いたことのない、あんたをずっと敵視してたけど。
 あんたは最初から私の敵じゃなかったってことよね」

「……どういう意味ですか?」

「だって、あんた、昔から、逸人にだけ緊張してたんでしょ?
 じゃあ、最初から、逸人の方が好きだったんじゃないの?」

 芽以は沈黙した。

「いえ……、そのようなことは」
という言葉がすぐには出ない。

 あまりにも突飛な展開すぎて。

 私が最初から逸人さんを好きだったとか。

 いやいやいや、そんな恐れ多い。

 だって、逸人さんは、子どもの頃から、なんでも出来て。

 何処にも隙が無いから、一緒に居るだけで、緊張して。

 幼なじみだと言うのに、向かい合ったら、口をきくのがやっとだった。

 特に近年――。

 だが、悩む芽以の前で、日向子はカラカラと笑って言ってくる。
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