パクチーの王様
「きっとそうよ。
 あんたはずっと、逸人が好きだったのよ。

 圭太のことは、なんとも思ってないから、側に居て、楽だっただけよ」

「あのー、それ、日向子さんにとって都合がいいから、そういう方向に話を持ってこうとしているだけでは……?」
と疑わしく思い、訊いてみたが。

「でも、私は自分の気持ちは揺るがないわよ。
 人になんて言われようともね。

 だから、今、私がちょっと言っただけで、そうかもってあんたが思うのなら。
 やっぱり、それで当たってるってことなのよ」

 そ……そうなのでしょうかね? 俄にわかには信じがたいのですが、と思ったとき、日向子が言った。

「だってさー。
 昔から、圭太とキスしたら、ときめいてたけど、逸人とだと、なんにも思わなかったもんねー」

 ……今、なんと?
< 367 / 555 >

この作品をシェア

pagetop