パクチーの王様

 ああっ。
 それは、パクチー抜いたら美味しそうだなと思って、いつも眺めていた、エビがたっぷり入ったエスニック風サンド、パクチー抜きっ。

「私、今なら、日向子さん、殺害しても許される気がしてきました……」

「誰もなにも許さないわよっ。
 下ろしなさいよっ、そのランプーッ」
と日向子は逸人の後ろに隠れかけたが、いや、これでは余計に殺されるっ、と思ったのか、逸人から離れて叫び出す。

「助けなさいよっ、逸人っ。
 私、今、あんたの嫁に撲殺されそうになってんのよっ」

「どうせまた、なにかお前が余計なこと言ったんだろう。
 芽以に謝れ」

「なにその決めつけっ。
 あんた、どんだけ嫁が可愛いのよっ」
と日向子が怒鳴ったとき、

「おはようございますー」
と呑気な声がした。
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