パクチーの王様

 彼は、ああ、と芽以に微笑みかけたが、日向子に気づくと、あ~、という顔になり、視線をそらして、行こうとする。

 それに気づいた日向子が立ち上がった。

「ちょっとーっ。
 なに逃げてんのよーっ」
と叫びながら、外に出た日向子は、逃げようとした静を捕獲してきた。

 静は、いやあ、と苦笑いしながら、
「通りかかったから、お茶でもと思ったんだけど。
 めんどくさい美人が居るな~と思って」
と悪びれもせず、言ってくる。

「こんな時間にお茶なんて、貴方、仕事してないの?」
と自分のことはさておき、日向子は静に訊いている。

「ああ、僕、絵画教室とかやってるんで。
 まだ時間じゃないから」

 絵画教室~?
と胡散臭げに日向子は訊き返す。

「生徒って、若い美人のおねえさんばっかりじゃないの?」
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