パクチーの王様
「ただいま帰りました」
芽以が急いで店に飛び込むと、今日もお客さんは多かった。
常連さんの顔も見えるが、みなさん笑顔で店は上手く回っているようだった。
むしろ、今まで、澄んだ空気を吸い込んでいた肺に、いきなりパクチーの匂いが充満して、芽以の方が、渋い顔をしそうになったくらいだ。
なんだ。
彬光くん、上手くやってたんじゃない、と思ったのだが、白いシャツに黒いロングのエプロン姿で厨房から出てきたのは、圭太だった。
「おう、芽以。
お帰り」
その声を聞きつけ、逸人が、
「おい。
芽以が戻ってきたら、帰れと言っただろ」
早く此処を立ち去るがいい――
とお前は何処の予言者だ、という口調で言ってくる。
すると、たくさんご友人を連れてきてくださったらしい常連のおばさまが笑って言い出した。
「あらー、いいじゃないですか、シェフー。
イケメンが二人も居て、楽しいわー」