パクチーの王様
「はい」
と返事がしたので、開けてみると、芽以は、暗がりで窓辺の机に向かい、ひとり座っていた。

 誰も居ないことに、ほっとしながらも、

 いや、待て。
 じゃあ、こいつ、ひとりで喋ってたのか?
と思って、ちょっと怖い。

 いやいや、もしかして、このスマホとは違う、秘密の通信機器を持っているのやもしれん。

 無線とか、トランシーバーとか。

 いや、そんな嫁も怖いが、と思ったとき、芽以がこちらを振り返り、
「あっ、逸人さんっ」
と叫んだ。

 まずいところを見られてしまったという顔をする。

 さっき、はい、と言ってしまったのは、ノックをされてつい、反射で答えただけだったのだろう。

「……なにしてるんだ?」
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