パクチーの王様
芽以はパクチーに歩み寄ろうと、パクチーを育てることにした。
可愛がって育てれば、愛着が湧くのではないかと思ったのだ。
「逸人さん、パクチーが好きになれたら、お話があるんです」
朝ごはんのとき、芽以はそう切り出した。
「……パクチー好きになれなかったら、話はないのか」
箸を手にしたままこちらを見、逸人はそう訊いてくる。
いや、そういうわけでもないのだが……。
食事を終えた逸人は、なにも言わずに片付け、休憩時間に何処かに出かけていったと思ったら、ちょっと育ったパクチーの苗を持ってきた。
どうやら、神田川に分けてもらってきたらしい。
立派な苗が三つもある。