パクチーの王様

 芽以は俯き、吐くのをこらえた。

 これを食べて、にっこり微笑めたら、逸人さんに言おうと思っていたことがあるのにっ。

 彼がその話を聞きたいかはともかくとして、と思いながら、芽以は口許を押さえる。

「じ、人生がメタメタになるほどのダメージです……」
と呟いて、

「……ずいぶん軽い人生だな」
と言われてしまったが、いや、そんな感じだっ!

 パクチーに出会ってから、何度も思っていたことを、また此処で繰り返し思う。

 人は何故、こんなものを食べなければならないのかっ!

 他に食べられるものいっぱいありますよっ?

 パクチーというのは、ある日、突然、
「あ、美味しい……」
と思うようになるものらしいが、まだまだその域には達せられそうにもなかった。
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