パクチーの王様
ちょっと気が遠くなりながらも芽以は言った。
「私……逸人さんのために……、頑張りますっ」
切れ切れになってしまった言葉をなんとか最後まで押し出し、芽以はダッシュでその場から走り去った。
なんかもう、すべてがカメムシ臭かったからだ。
だが、パクチーの匂いはピザをつかんだ手にもついており、鼻に残るパクチーの香りを更に増幅させる。
洗面所で芽以は、いつまでもいつまでも、いつまでも、手を洗っていた――。