パクチーの王様
すると、圭太が、
「俺はいつも会社で心を無にしているぞ」
と笑いながら、笑えないことを言ってくる。
「あんまり無理しないでね」
と芽以が心配して言うと、横から逸人が、
「そいつに、やさしい言葉などかけてやらなくていい。
お前を捨てた男だぞ」
と言ってきた。
いや、私が最初から貴方を好きだったとすると、この人は特に私を捨てたわけでもないんでは、と思っていると、逸人はフライパンを圭太に向かって突き出し、言い出した。
「代わりに俺が慰めてやろう。
あまり無理するな、圭太。
なにかあったら、俺に言ってこい」
「……男に言われても、慰められないなあ、ちっとも」
と呟く圭太に、逸人が、
「じゃあ、日向子に言ってもらえ」
と言う。
「それ、かえって、血も凍るから……」
と言いながらも、圭太は昼休憩まで手伝ってくれた。