パクチーの王様

 芽以たちは受付嬢なのだが、夜間から朝までは、受付は警備員さんがやってくれている。

「いっ、今行きますーっ」
と千佳が振り向いている隙を突いて、芽以は千佳の腕の下を潜り抜け、更衣室のドアへと向かい、駆け出した。

「おっ、私を抜いてくとかっ」

 やるなっ、と妙な感心をしながら、千佳がバスケ部の本気のスピードで追いかけてくる。

 ひーっ、と急いで、受付に駆け込んでしまい、
「ちょっと、走らないでよーっ」
と課長に怒られてしまったが。

 受付にはもうお客さんが居て、こちらを見て笑っている。

 いつも訪ねて来られる若い男の人だ。

 金髪に近いような髪に、色素の薄い瞳。

「おっ、イケメンくんだっ。
 私やるやるっ」
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